『メガネをかけて』の淡い心の動きなんて、小野塚さんの作品では珍しい内容だと思います。いつものことですが、最後にグッと作品を引き締める俳句の選択眼は素晴らしいと思います。『我れに五月を』の、小野塚ワールドを楽しめる昭和初期を舞台にした、胸を患った主人公が、大学の同級生である医者にほぼ一方的な切ない片思いを寄せる話に、迷い子と遊郭とキリスト教を混ぜるところは真骨頂です。セリフ一つとっても、今は使われていないような昔のルビなど振ってあるところなど、ホントにいろいろな文学や歴史を勉強しているんだなぁと思います。
小野塚作品全体に通していえることですが、登場人物たちの表情の豊かさって、小野塚さんの描く特徴ある『眼』がすごい効果をもたらしてると思います。力のある眼です。本書の装丁に描かれている「我れに五月を」の登場人物・惣の眼が美しく印象的です。 人は愛を求めて表題作3話と短編「メガネをかけて」収録。時代物と現代物がセットになった一冊だが、そんなに違和感は感じない。どちらも静かでひたむきな、愛し愛されたい人たちの物語だからだ。繊細で深い作者の世界観に寺山修司の言葉はとても良く似合う。美しく冷たく、純粋で愛しい。そういうところも、とても似ているなと感じる。
ガツンというよりはじわりと染み込んでくる作品。オススメします。