1980年代、ニューウェーブ系インディーズバンドに在籍していた主人公と、才能があるんだけど風変わりな男・ヤマギシ(ノッポさん+スナフキン÷2)の出会い。ブームが終焉を迎え5年過ぎ、8年過ぎ、10年が過ぎ。夢破れて実家に戻って会社員をしている鳥井のもとに、突然届いたヤマギシからの便り。会うつもりのなかった鳥井の心を揺り動かしたのは、焼き捨てようとしていた絵本に書かれていた10年前のヤマギシからのメッセージ。そして再会。
純粋すぎるゆえに生きにくく、孤独でやさしいヤマギシをカエルに、ヤマギシを置いてロンドンへ旅立った鳥井を渡り鳥にみたてて、10年の歳月が描かれます。音楽好きの作者らしい描写もリアルで、青春の痛みと懐かしさ、ラストではじんわりとした暖かさに浸れます。読後感も良く、おすすめ。
表題作のほかに掲載誌が廃刊になり未完のSF作品「スパングルトレジャー」、まんが家アシスタントが主人公のホラー短編「赤いベレー」収録。
杉本亜未は才能あるのに掲載誌に恵まれず転々としている不遇な作家という印象がありますが、描きたいものがボーイズラブだけにとどまらないのも一因かと思われます。こういう作品を描ける作家こそ出版社は大事にしなきゃいけないと思うんだけどな。
『garden 解語の楽園』『Sweet Pain』『エミーのすべて』『美しき獲物』が収録されています。この作品の中でも、後々につながるような、小野塚さんらしい、詩の引用や、心に残るモノローグもあるので、ディープな小野塚ファンだったら、読んでみても良いと思います。